前回のツーリングのときよりも右側通行に戸惑うことなくレンタル屋を後にし、
ラスベガスを抜けるため
I15(Interstate15(フリーウェイ))
を目指す。飛行機の中で、ある程度は地図を見ていたので
迷うことなくI15へ到着。一路北上!

「やはり広い!」が第一の感想。
まだ都市部なので交通量が多いのがちと残念ではあるが
アメリカツーリングを肌で体感できたことが嬉しい。
15分程走ると徐々に交通量も落ち着いてくると同時に廻りの景色も変わり
何も無くなってきた。
歩きだとラスベガスという都市も広く感じるのであろうが
バイクだとあっという間にサヨナラである。
さらに30分程走った所で一旦休憩。
モータースピードウェイという街に到着。
妻と「やっぱり来てよかったね」「広いね!!」等の会話を交わす。
ただ、妻が笑顔で言ったひとこと
「砂埃がビシビシ当たるね!さっすが砂漠!!」
には「?」マークが一杯だったがあいまいに「そうだね~・・」と返しておいた。
(砂埃?砂なんか舞ってたかなぁ・・・?)
そんな会話をしながらもpetroというレストラン

で遅めのランチにする。
どうしてもオーダーしやすいバーガー類に目が行き、
ダブルベーコンチーズを頼む。

が、これが失敗。
ずっと飛行機で移動し寝たり起きたり食べたり飲んだりして
旅名物「ハラが減ってるような減ってないような症候群」
になっていたにもかかわらず「おいおい、どこの大食い選手権だよ」的の
大きさのバーガーが来たのだ。
出されたものは食う!の精神で完食はしたが
もうハラマックス!!
フラフラになりながらもレモネード

で消化を促していると
妻からこれ食べる?の打診!!
妻の料理も多かったようだ。
さすがの自分もこれは丁重にお断りをした。
店から出て再度出発しようと準備をしていると、
どうもバイクを止めている地面が汚れているようだ。
なんとなく周りを見渡すも汚れているのはここだけのようだ。
汚れの正体はオイルっぽい。
自分のハーレーからポツポツとオイルが垂れているのだ。
なんとなく妻のバイクの下を確認するがオイルは垂れていない。
(前回の旅でもこんなだったっけかなぁ・・・まさか・・・。
まぁハーレーはオイル垂れ流しバイクだからな・・・個体差があるのだろう・・・)
と疑念と折り合いをつける。
そんな中でもモニュメントバレーを思うと
旅の楽しさ復活!「行こうか」と妻に合図し
さらに北上を開始した。
道は広く快晴の空。本当に来てよかった。
景色を眺めつつバイクで進むアメリカは最高だ。
3~40m離れた反対車線を走るライダーからも手を上げる挨拶が返ってくる。
日本ではまず体験できない経験であろう。
(そろそろガソリンでも入れるか)と走りながら思案していると、
先ほどレストランで見たオイルが思い出された。
走りながら股の間を確認すると
「オゥ!?」
白煙が吹き出ているではないか!
「オゥ!?」。
よく見ると
エンジンとマフラーの接続部分からアクセルをひねると白煙が出ている。
そしてサイドカバーを見ると
オイルがべっとりとついている。
さらにサイドバッグまでオイルが飛散しているようだ・・・
ということは・・・。
先ほどのレストランに着いたときの妻のひとことが思い出される。
「砂埃がビシビシ当たるね!」
合点がいった。
すぐさま妻に前後隊列変更の合図を出し先に行かせる
(オイルド妻。すまん!!)。
「落ち着け、落ち着け」と自分に何度も言い聞かせるが、
自分の「これはヤバイセンサー」はメーター振り切っている。
「さぁどうするオレ!!」
アクセル開度を最低限にしオイル漏れを最小限にした走りで妻の後を走るが、
どんなに低回転でも白煙は微量ながらも吹き出ているようだ。
(時速100km越えで走っていて微量の煙が視認できる?それはもうアウトだよ。)
(モニュメントバレーをあきらめる?)
(妻だけ一人で行ってもらう?)
(ガソリンスタンドで修理?)
(代車を持ってきてもらう?又は取りに行く?)
(高速上でエンジン焼き付きリヤタイヤフルロック?)
周りの景色が後方へ吹っ飛んで行くのに呼応するかのように
ネガティブ思考が頭の中を駆け巡る。
空は快晴なのに後方から来た車がワイパーを動かしながら追い抜いていく。
「あぁ・・・スンマセン。それ、オレのオイルっす。」
と心の中でなんどもあやまりながら
自分の吹き出させたオイルで後方の車に迷惑をかけ続け
「ここで停まったところでどうにもできない!!」
と気持ちを奮い立たせ、
空は快晴、心は暗雲、的にアメリカを走り続けた。
(どうしよう、どうしよう・・・)と走っていると、
前方にガソリンスタンドの看板が見えた!
(「絶対に入って!!」)と前方を走る妻に叫ぶ。
聞こえるわけも無いのだが妻のバイクの右ウインカーが奇跡の点灯!!!!
(まぁガソリン入れるタイミングだよな・・・)
着いたのはグランデールという町。
行きの飛行機の中でここら辺で宿泊できそうだったら泊まってもいいね。
と話していた町だが、とんでもなかった。
町は町だが、
周りにあるモーテルはつぶれ、廃屋と化している。
あるのはガソリンスタンド1件だけ。何たること!!
頭の中をグルグル廻る”不安ワード”達を引き連れ、
妻に告げる。
「たぶんオレのバイクがヤバイ・・・」
今走ってきたルートを目で追うと
バイクから点々とオイルの後が続いている。
どんなダメ探偵でもオレが今日どこでランチを食べたかは突き止められそうだ。
しかも現在進行形でオイルは漏れ続けている。
走りながら考えた案を妻に伝える
「レンタルバイク屋に連絡をつけ、
一人で代車を取りにラスベガスまで戻り、再合流。
できれば代車を持ってきてもらうのがベスト。
自走でラスベガスまで戻るのはかなり危険で無理な気がする。
現在16:30。
レンタルバイク屋が閉まるのはおそらく17:00くらいだと思う。
中に入って公衆電話かけてくる。」
と一気に伝え、レジに入った。
ここからさらに重なる問題。
バイクが壊れていて時間が無いことなどを店員に伝え、
一番の目的を伝えようとしたその刹那。
(ん?公衆電話?・・・?なんて言うんだ公衆電話!!!
家の本棚にある「これ英語で言えますか?」が今すぐ欲しい!!頼む!!)
と青ざめながらも出た言葉が
「Can I use coin phone?」
(違う!気付け俺!!「coin」じゃねぇっ!!)。なんとなく理解した店員は
「20マイルくらい戻った町にあるよ」
とのたまう。・・・・・・・・・。
「オイ!コラ!こっちはトラブルかかえてるし
戻るのはマジで無理だって伝えただろ。
あとな、ぶっちゃけて言うけどよ、
公衆電話なんか無くたって、
てめぇ! ” 携・帯・電・話”くらい持ってんだろうよ!
「俺のセルラーフォン使うかい?」
くらいは言ってくれるかなってこっちは期待してたんだよっ!!
これがアメリカか!!」
・・・・・・・・と流暢に英語がしゃべれるはずも無く
「あっそうですか、ありがとうございます!
ついでにこのオイルいくらですか?買っていきます。」
と店内にあったオイルを2本購入し、
へりくだったへっぽこ日本人を決め込みレジを後にした。
あぁこういう時に使うんだな・・・
「ガッデム!!」
さあ本格的にヤバクなったきた。
電話もねぇ!モーテルねぇ!時間も助けもありゃしねぇ!・・・。
すっかり「行くぞ!モニュメントバレー!」が「イクゾー」になっちまった。
そんな電話もねぇ!な町に行くなら
携帯電話くらい日本で借りて行けばよかったのに。
と思うかもしれないが、
ネバダ、アリゾナ、ユタをカバーしているレンタル携帯は無かったのだ。
日本で使っている携帯のローミングサービスってアメリカ全土、
もちろん砂漠のど真ん中でもモニュメントバレーの谷間でもバリバリ使えたのかなぁ・・・
などと悶々としていると、
さっきから頭の中をグルグル廻る
”不安ワード”達に
「トイレにも行きたい!」
が、エクステンドされてきた。
不安ワードのカーニバルがあったら間違いなく表彰台は狙えるだろう!
「トイレに行きたい?」それならさっさと行けばいいだろうに、
と思うであろうが、さっきから視界のスミに写ってるんだよ、
”灼熱の太陽にさらされたプラスチックでできた仮設トイレ達”が!!
16時台とはいえ気温は高く、のどはカラカラ、
トラブル真っ最中でその仕打ちはねぇだろう。
絶対にそのトイレ水洗じゃねぇだろ。
水洗便所もありゃしねぇ。ってか。
と毒づきながらも、
「よし落ち着こう」
と妻に言ってみる。
おそらく(オマエがな・・・)と思われてることには気付かないフリをして、
ガソリンスタンドの真ん中でタバコを吸って落ち着いてみることにする。
タバコの一利(いちり)。
通常自分は旅に出るとバシバシ写真を撮るが
トラブル時には写真が全く無い。
面白いくらいトラブル時には余裕がなくなるのだ。



しかしこのタバコを吸いながら取った写真が残っているところを見ると
このタバコでずいぶん落ち着けたのではないかと思う。
しょうがないので
ひとつひとつ不安ワードを解決していくことにする。
まずはトイレに向かう。
「セイヤッ!!」
と気合をいれ仮設トイレの扉を開ける。
(ひょっとしたらアメリカの砂漠にある仮設トイレは真夏の日本のトイレとは違って・・・)
的な希望を抱いていたが、
想像通りのアメニティ、室温、香り、そして視覚効果。
「よーし、よーし。OK、OK!」と扉を閉める。
”不安ワード達”でさえ活動を停止する環境。
脳って良くできてるなぁと人間の不思議を体験。
朦朧となりながらトイレを脱出。
「私もトイレ行きたい」
と言う妻には何も言うことができずスルー。
トイレから朦朧となりながらも戻った妻と協議
「店員は20マイル戻れと言うが、
先に進んで町が無いなんてことは無いであろう。
まずは公衆電話を見つけて連絡をしなければ。
宿泊もできない事には何もできない。先へ進もう。」
という結論に達した。
先ほど購入したオイルを補充し、ソロリソロリと北上を再開。
急ぐことはできないが
レンタルバイク屋が閉まってしまったら明日の朝からの行動開始になってしまい、
今回の旅の予定が大きく変更になってしまう。
順調にいっていればおそらく朝7時くらいには走り始められる予定のはずが、
明日の朝おそらく10時オープンの店でバイクを手配し始めて、
バイクを取りに行って2時間、戻って2時間。
最高にうまくいったとして14時から動き始める事にはなるだろう。
「モニュメントバレーをあきらめる」という選択肢だけはとりたくはないし
「また来ればいいよ」で済ますには今までの2年は長すぎた。
コツコツと貯金をしてくれた妻。
心から楽しみにしていた妻の笑顔を思うと、
なんとかして店が閉まるまでに電話を探さなくてはという気持ちになってきた。